【マリオ64 RTA】WDW100枚シクレを考察したら新ルート案ができた件 前編

考察みずびたシティー

2018年12月頃。

現行ルートの考察から、70枚RTA用に『みずびたシティー 100枚シークレットスター』(以下、100枚シクレ)の新ルート案を編み出した。

このルートができるまでの考察が結構面白いものだったので、今回はそれを語ろう。

なお、この話は2記事構成になっており、この記事は1記事目にあたる。

いきさつ

当時、70枚RTAの世界記録を狙うプレイヤーのひとりにTaggo氏がいたのだが、同氏は100枚シクレが苦手なのか、配信上でこのスターを物凄く練習していた。

この練習姿を見た私は「もう少し楽な100枚シクレってないのかな?」と疑問に思い、軽い気持ちでこのスターのアイデアを考えることにしたわけだ。

これがいきさつとなる。

現行ルートの考察

実は、このスターの現行ルートを考察すると、以下の3つのことが分かるのだ。

(1) スタート付近の5枚コイン列は最後に取るのがベスト
(2) 最初の木箱は最初に取るのがべスト
(3) 現行ルートの弱点は『2匹目のアメンボ』

以降で、それぞれを説明しよう。

※以下は現行ルートの参考動画である。

(1) スタート付近の5枚コイン列は最後に取るのがベスト

このスターには2つの特徴がある。

  • コインとシークレットの配置の関係で、ステージの隅から隅まで移動しないといけない
  • 上に登る・下に降りるという『上下移動』がある

で、後者の『上下移動』という観点から99.9%確定するのが、『スタート付近の5枚コイン列は最後に取るのがベスト』ということだ。

なぜこれが確定するのかを、以降のセクションで順番に述べる。

『100枚スター単体の最適ルート』は『100枚シクレの最適ルート』にならない!

WDW100枚スター単体における最適な導線は以下となっている。このルートは2013年以前に私が考えたルートなのだが、現在でも最適な導線だと思っている。

(濃青が前半パート、薄青が後半パート)

wdw-100secrets-new-route-part1-1

私は考察のはじめとして、『この導線が100枚シクレの最適ルートになるのか』を考えてみた。

この導線を100枚シクレにする場合、最低限として、

  • 100枚スター取得 → シクレスターへの移動(パート1)
  • シクレスターの出現アニメーション(パート2)

を加える必要があり、(当時の)ワンスター記録に加えてみたタイムが以下。

56.13秒(ワンスター記録) + 9.60秒(パート1) + 3.83秒(パート2) = 69.56秒

このタイムにシークレットを回収する時間(箱を押す時間)が加わるので、ざっと72秒以上はかかると推測できる。

現行ルートは理想タイムは69秒程度なので、つまりは、『100枚スター単体の最適ルート』を改変しても『100枚シクレの最適ルート』にはならないことが分かる。

以降、このルートのことを『ワンスター100枚シクレ版』と呼ぶことにしよう。

このスターのポイントは『上下移動』!

『ワンスター100枚シクレ版』と『現行ルート』のルート的な違いは以下の2つである。

  • 一番上の足場の違い
  • 最初の4つの木箱まわりの違い

この違いを考察すると、このスターのポイントは『上下移動』であることが分かり、そして、『スタート付近の5枚列は最後に取るのがベスト』という話に行き着くのだ。

一番上の足場の違い

以下が一番上の足場の導線を示したものだ。赤線が現行ルート、青線がワンスター100枚シクレ版となる。

wdw-100secrets-new-route-part1-2

このパートは、現行ルート(赤線)よりもワンスタールート(青線)のほうが速い。

参考動画を使って比較したところ、1.5秒程度速いことが分かった。

この事実だけで考えると、ワンスター100枚シクレ版は『69秒(現行ルート) – 1.5秒 = 67.5秒程度』になると予想されるが……。

実際の見積タイムは、先に示したように72秒以上になる。

両ルート違いは2パートだけなので、この4.5秒(72 – 67.5)という差は、もう片方のパート(最初の4つの木箱まわりの違い)で生じたと推測できる。

最初の4つの木箱まわりの違い

以下が最初の4つの木箱まわりの導線を示したものだ。赤線が現行ルート、青線がワンスター100枚シクレ版となる。

wdw-100secrets-new-route-part1-3 wdw-100secrets-new-route-part1-4

これら導線を文字で表すと以下となる。

  • 現行ルート = 『最初~木箱』+『木箱~青スイッチ』+『水位クリスタル付近~スタータッチ』
  • ワンスター100枚シクレ版 = 『最初~青スイッチ』+『水位クリスタル付近~木箱』+『木箱~壁キック1回目』+『壁キック1回目~スタータッチ』

このうち、重複している移動を消すと、面白いことが分かる。(アプローチ差は無視)

  • 現行ルート = 『最初~木箱』『木箱~青スイッチ』『水位クリスタル付近~スタータッチ』
  • ワンスター100枚シクレ版 = 『最初~青スイッチ』『水位クリスタル付近~木箱』『木箱~壁キック1回目』+『壁キック1回目~スタータッチ』

このパートにおける差は、ワンスター100枚シクレ版の『壁キック1回目~スタータッチ』しかないのである。

先で話したように『一番上の足場の違い』は1.5秒程度なので、『壁キック1回目~スタータッチ』が1.5秒より速ければ、ワンスター100枚シクレ版のほうが速くなるが……。

このパートで1.5秒以上かかるのは誰がどう考えても明らかだ。

調べてみたところ、『木箱~壁キック1回目』+『壁キック1回目~スタータッチ』の移動に5秒程度かかることが分かった。計測はしていないが、『壁キック1回目~スタータッチ』だけでも、1.5秒以上はかかっていると思われる。

結論を抽象化してみる

ここまでで得られた結論を抽象化してみる。

“ワンスター100枚シクレ版には、

  • 一番上の足場のまわり方を変えることで短縮できるタイム
  • 一度一番下の足場まで降りて、再度登り直すタイム

の要素があり、これらを比較すると後者のほうが圧倒的に遅い。そのため、ワンスター100枚シクレ版は遅い。"

なぜ後者のほうが遅いのか――これはマリオ64における一般的な話から答えることができる。

一般的に、マリオ64では、壁キックなどの複数の処理を伴う上下移動は遅い。

後者の移動は壁キックを3回もする移動なので、これに当てはまっており、だから遅いのだと考えている。

結論と念のための調査

私はここまで考察した後、「一度下まで降りると登り直すのに時間がかかるから、少なくともシクレスターと同じ高さ以上で100枚スターを取得して、上から下に降りる形でシクレスターを取得するのが最適なのでは」という考えに至った。

そして、『上から下に降りるようにシクレスターを取得するには、最後に5枚コイン列の足場を通る必要がある』という結論に行き着く――つまりは、『(1) スタート付近の5枚コイン列は最後に取るのがベスト』という結論に行き着いたのだ。

ただ、ここであるひとつの可能性を見逃していたことに気づいたので、念のためそれを調査することにした。

その可能性とは、『最後に5枚コイン列の足場を通らず、且つ、上から下に降りる形でシクレスターを取得できる導線で、他のルートが無いかどうか』だ。

この2つを満たすルートとして私が思いついたのは、『最初の木箱後、下から5枚コイン列の足場に上がって回収、最後はエレベータあたりからシクレスターへ向かう導線』である。

wdw-100secrets-new-route-part1-5

適当に区間ごとの動きを録画しタイムを試算してみたところ、遅いことが分かった。(タイムは忘れた)

この導線も一般的な話(壁キックなどの複数の処理を伴う上下移動は遅い)に当てはまっているので、そのせいかもしれない。

(2) 最初の木箱は最初に取るのがべスト

実は、(1)の考察を裏返すと、『最初の木箱は最初に取るのがべスト』という結論にも至るのだが……。この意味を説明しよう。

wdw-100secrets-new-route-part1-6

まず前提として、100枚シクレはステージ最初にある木箱のコインを回収しないとコインを100枚集めることができない。

ダウンタウンを除くと、このステージには107枚のコインしかないからである。

ということで、木箱付近は必ず通らなければならないのだが、シークレットスターが出現する配置を考えると、

  • 最初に木箱のコインを取るか
  • 最後に木箱のコインを取るか

の2択しかないことは明白だろう。(木箱付近に来るのがこの2つのタイミングしかなく、他のタイミングだと明らかに遠回りになるため)

で、(1)の結論から後者の可能性はなくなるので、消去法で『最初に木箱のコインを取るのがベスト』になるわけだ。

(3) 現行ルートの弱点は『2匹目のアメンボ』

wdw-100secrets-new-route-part1-7

上記画像のアメンボ(2匹目のアメンボ)の動きは、乱数によって決まる。

そのため、マリオが青コインスイッチ付近に来た時このアメンボがどこにいるかが変わるので、アドリブで対応しなければならない。

一番厄介なのは、『自分が通ろうとする導線にアメンボが来なくて、倒しに行く手間が出てくる』というパターンなのだが……。

パターンの話は置いておいて、『2匹目のアメンボのせいでアプローチを固定化できない』のが現行ルートの弱点なのである。

実はこれが、次に述べる新ルート考案のきっかけになっている。

むすび

次回へ続く。