【マリオ64 RTA】ピーチスライダーで1フレーム更新するために行なった考察を語る

考察ピーチのかくれスライダー

今回は、70枚idealrunにてRTAアプローチのピーチのかくれスライダー(以下、ピーチスライダー)をタスった時の考察を話す。

※RTAアプローチとは『真正面に幅跳び2回 → 正面の壁で向きを変える』アプローチのこと。

120枚idealrunと70枚TASを比較してみた

スライダー上部の差は2フレーム

まずはじめに、120idealrunと70枚TASを比較しどこで差が出ているかを確認してみた。

両者は最初の向き変更の壁衝突の位置が異なるため、タイムを比較するには壁衝突の先で同期を取る必要がある。

(赤丸がRTAルートの壁衝突位置、緑丸が70タスの壁衝突位置)

pss-1frame-3

以下の場所で同期を取ることができた。この段階で3フレーム(0.10秒)の差があるようだ。

※1枚目が70枚TAS、2枚目が120枚idealrun。
※70枚TASの動画: 別ROMでTASファイルを再生したものを録画した。

pss-1frame-5 pss-1frame-4

そのまま次の向き変更の壁衝突を見てみる。差は5フレーム(0.16秒)。

pss-1frame-7 pss-1frame-6

『同期時の差は3フレーム』『壁衝突の差は5フレーム』なので、最初の壁衝突の場所の違いを無視した場合、スライダー上部の差は2フレームとなる。

スライダー下部の差は1フレーム

スライダー下部に着地したタイムを確認してみたところ、スライダー上部と同じく差は5フレームあった。

pss-1frame-9 pss-1frame-8

続いてゴールタイム。120枚idealrunは12.43秒である。

先ほど確認した時は5フレームの差だったので、70枚TASは 12.43 – 5フレーム(0.16秒) = 12.26秒 だと予想できるが……。

確認してみたところ12.30秒だった。

pss-1frame-2 pss-1frame-1

つまり、スライダー下部は120枚idealrunのほうが1フレーム速かったのである。

なぜ1フレームの差が生まれたのか――マリオの角度の問題で生じたのだと私は予想している。

マリオの角度も考慮しなければならない

以下の青線はゴールに向けてのライン取りとなっている。(少し大げさかもしれないが)

pss-1frame-11 pss-1frame-10

マリオの角度を見ると、120枚idealrunのほうが少し右を向いているのが分かると思う。

これにより、120枚idealrunのほうが直線的に滑ることができているので、結果的に1フレーム速くなったのだと予想している。

「70枚TASの壁衝突タイムで、120枚idealrunのマリオの角度を作れたら最強なのでは?」と思うかもしれないが、残念ながらそれはできない。

先にも挙げたが、以下が両者の壁衝突フレームである。

70枚TASは灰色の壁に触れるぐらいで壁衝突しているのに対し、120枚は手すりに壁衝突しているのが分かるだろう。

pss-1frame-13 pss-1frame-12

スライダー下部で120枚idealrunのマリオの角度を作るには、この後、若干下を向く角度のジャンプを出さなければならない。

手すりに壁衝突している120枚idealrunではその角度のジャンプを出せるのだが、70枚TASの壁衝突の位置では出せないのだ。

反対側の灰色の壁にぶつかってしまうからである。

pss-1frame-14 pss-1frame-15

まとめると

  • スライダー上部: 120枚idealrunのほうが2フレーム遅い。
  • スライダー下部: 120枚idearunのほうが1フレーム速い。
  • つまり、120枚idealrunの中で70枚TASの壁衝突を再現できれば、(-2)+(+1) = -1フレームとなる。(1フレーム更新できる)

私はこの1フレームの更新余地に気づき、70枚TASを真似てみた。

しかし、かなり精密な操作が要求されるようで、人間ではほぼ不可能だと感じたので更新を諦めてしまった。

120枚idealrunとシゲル氏の動画を比較してみた

壁激突までの差は1フレーム

上記セクションの内容を知人に話すと、120枚idealrunより1フレーム速いらしいシゲル氏の動画のURLを教えてもらうことができた。

今度はこれと120枚idealrunを比較することにしたわけだ。

シゲル氏の動画では、最初幅跳び2回のアプローチではなく、ジャンプダイブ+ダイブのアプローチを使っていた。

速度などの関係でジャンプダイブ+ダイブアプローチのほうが1フレーム速いタイムが出るので、+1フレームで見ていくことにした。

まず、上の壁激突タイミング。シゲル氏の動画では5.86秒となっていた。

pss-1frame-16

これを幅跳び2回アプローチに換算すると5.90秒となる。

たしかに、教えてもらった通り、5.93秒壁衝突の120枚idealrunより1フレーム速いようだ。

単純に滑る部分で1フレーム速い可能性もあるので、適当な場所で同期を取ってみた。

pss-1frame-17 pss-1frame-18

  • 1枚目: シゲル氏の動画の4.96秒のフレーム(幅跳び2回アプローチ換算で5.00秒)
  • 2枚目: 120枚idealrunの5.00秒フレーム

つまり、5.00秒までは全く同じタイムとなっているので、壁衝突の部分で1フレームの差が出ていることが確定したわけだ。

よくよく見てみると差が無かった!

上記の事実を知った私は5.90秒壁衝突のタスを作成し始めたのだが……。

どんなに試しても、5.90秒壁衝突ではマリオが手すりに引っかかり、うまく下に降りることができなかったのである。

困り果てた私は、再度シゲル氏の動画をじっくりと見返す。

そして、壁衝突後のジャンプまわりのところで、重大な見逃しがあることに気づく。

その見逃しとは……、シゲル氏の動画はAボタンを2フレーム押したジャンプだったことである。

pss-1frame-19

120枚idealrunや70枚TASではAボタンを1フレーム押したジャンプを使っていた。

なので、「シゲル氏の動画も1フレームジャンプだろう」と勝手に決めつけていたため、この点に気づかなかったわけだ。

2フレームジャンプを使っているということは、スライダー下部に着地するまでにタイムロスが発生するはずである。

それを確認したのが以下で、シゲル氏の動画では9.56秒で着地していた。

pss-1frame-20 pss-1frame-21

幅跳び2回アプローチ換算で9.60秒、つまり、120枚idealrunと全く同じタイムである。

この事実を知った私は「壁激突を1フレーム速くしても1フレームジャンプができないから更新できない」と結論付け、諦めることにした。

ちなみに、このシゲル氏の動画はスライダータイム12.43秒と書いてあるが、スター出現一歩手前の1フレームが欠損しているため、本当は12.46秒のようだ。

120枚idealrunとNyZ氏の動画を比較してみた

壁激突までの差は1フレーム

シゲル氏の動画との比較結果を知人に話すと、「最初の壁激突で1フレーム速くできるっぽい」というチャットと共に別の動画が送られてきた。

その動画は以下のNyZ氏の動画である。

私は「もうだまされないぞ」という思いで、この動画の確認を始めた。

NyZ氏の動画でもジャンプダイブ+ダイブアプローチを使っていたので、+1フレームで見ていくことにした。

まず、最初の壁激突タイムは2.76秒であることが分かった。幅跳び2回アプローチ換算で2.80秒である。

120枚idealrunは5.83秒壁衝突なので、この段階で1フレーム速いことが分かる。

pss-1frame-22 pss-1frame-23

続いて、次の壁激突のタイム。

NyZ氏の動画は5.86秒だったので、幅跳び2回アプローチ換算で5.90秒となる。

120枚idealrunは5.93秒なので、1フレーム速い状態をキープできていることが分かった。

pss-1frame-24 pss-1frame-25

最後に、下着地時のタイムも見てみる。

NyZ氏の動画は9.53秒。幅跳び2回アプローチ換算で9.56秒となる。

120枚idealrunは9.60秒なので、この段階でも1フレーム速い状態をキープできているようだ。

pss-1frame-26 pss-1frame-27

実際にタスってみる

上記比較から、最初の壁衝突を1フレーム速くすると最終タイムを1フレーム速くできることが分かったので、実際に試してみた。

まずは最初の壁衝突。NyZ氏の動画と照らし合わせながらタスったところ、意外と簡単に2.80秒を出すことができた。

2.83秒壁衝突の120枚idealrunよりも1フレーム速いので、この1フレームをキープできれば最終タイムも1フレーム速くなることになる。

pss-1frame-28

続いて次の壁衝突。この壁衝突においても、1フレーム速い5.90秒で、良さげなマリオの角度を作ることができた。

pss-1frame-29

スライダー下部の着地フレームは以下。タイム(9.56秒)もマリオの角度も問題ないことが分かる。

pss-1frame-30

このまま最後まで滑った結果、無事1フレーム更新することができた。(スライダータイム = 12.40秒)

pss-1frame-31

むすび

今回は1フレームを更新するために行なった考察を話した。

当時、「もうやりたくない」という顔をしながら考察していたことは今でも鮮明に覚えている。

ピーチスライダーのように、ひとつ前のアプローチや速度があとに影響してくるスターはときどきあるので、皆も考察するときはその点も忘れないようにしてほしい。

なお、ピーチスライダーについては、始めのセクションで話した通り、『上で2フレーム衝突を速くする』『下で1フレームロスに抑える』ことさえできれば、あと1フレームだけ更新できるはずなので、興味のある方はチャレンジしてみてほしい。