【マリオ64 RTA】BitFS 赤コインスターを考察したら新ルートができた件 後編
この記事は、前回の続きとなっている。
前回は、ルート案ができるまでの話をした。
今回は、『なぜルート案のほうが速い結果となったのか』『なぜいままでルート案の導線じゃなかったのか』の2点を考察する。
なぜルート案のほうが速い結果となったのか
一言で述べるなら「ルートの差分(2つ)を見てみると、どちらもルート案のほうが速いから」というのが私の回答である。
具体的には以下2つのパートがあるのだが、まずは前提となる『ルートの差分』を確認してみよう。
- ルート案のほうが速くかごの足場に上がることができるから
- エレベータの上昇時間(待ち時間)は想像以上に短いから
前提: ルートの差分
話をしやすくするために、ポールからエレベータの距離を『緑色線』、ポールからかご内の赤コインの距離を『青色線』としよう。
現行ルートとルート案を緑色線と青色線で表すと以下となる。
- 現行ルート: ポール~かごの足場に乗るまで + 緑色線 + (緑色線 + 青色線) + (緑色線 + 青色線)
- ルート案: ポール~かごの足場に乗るまで + 青色線 + (緑色線 + 青色線) + エレベータの上昇時間
これらの差分を抽出したのが以下だ。
- 現行ルート: ポール~かごの足場に乗るまで + 緑色線 +
(緑色線 + 青色線)+ (緑色線 +青色線) - ルート案: ポール~かごの足場に乗るまで +
青色線+(緑色線 + 青色線)+ エレベータの上昇時間 - 差分: 『ポール~かごの足場に乗るまでの差』と『緑色線x2 VS エレベータの上昇時間』
アプローチ差を無視すると、2つの差分があるのが分かったと思う。
この差分ごとに現行ルートとルート案を比較すれば、ルート案のほうが速いことが証明できるはずで、実際にそれを見てみた結果が、セクション最初で述べた2つの回答となっている。
では、各回答の詳細を以降で説明しよう。
ルート案のほうが速くかごの足場に上がることができるから
実は、現行ルートとルート案には、ポールからかごの足場に上がるまでにかなりの差がある。タイムで言うと、現行ルートは1.66秒、ルート案は0.96秒で0.7秒差。
この差の原因は、『ポールを掴んだ時のマリオの向きと高さ』にヒントがある。
ポールに初めて掴んだ時のマリオの向き・高さは以下となっている。
- ポールを掴んだ時点で、マリオがかご内の赤コインに向いている。
- ポールを登らずとも、スティックをニュートラルにすればかごの足場に上がることができる。
つまり、ルート案では、マリオの向き・高さを変える必要が無いのだ。
一方、現行ルートでは、マリオの向きを変える分の時間が、そのままロスになってしまう。
「ルート案のほうが速い理由は、この差がひとつの要因なのでは」というのが、1つ目の回答の意味となる。
エレベータの上昇時間(待ち時間)は想像以上に短いから
実は、皆が想像しているほど、エレベータの上昇時間(待ち時間)は長くないのだ。
『ルートの差分』セクションの内容をおさらいすると、ルート案から見た現行ルートの余計なところは、以下の画像の『緑色線x2』の移動である。
これに対し、現行ルートから見たルート案の余計なところは、『エレベータの上昇時間』である。
これらのタイムを見てみると……。
- 緑色線x2: 1.70秒
- エレベータの上昇時間: 1.36秒
面白いことに、『エレベータの上昇時間』のほうが『緑色線x2』よりも短いのである。これが、2つ目の回答の意味となる。
余談: なぜ『緑色線x2』がこんなに遅いのか
この質問に対しては、「エレベータの位置・かご内の赤コイン・ポールの位置の関係にある」というのが私の回答だ。
上記画像から、ポールからエレベータ間のほうが、ポールからかご内の赤コイン間よりも1.5倍以上長いことが分かるはずだ。
この長い距離を往復しなければならない(緑色線x2)というのは、さすがに遅いのではないだろうか。
もし、両者が同じ長さだった場合、現行ルートのほうが速い結果になっていたのかもしれない。
なぜいままでルート案の導線じゃなかったのか
実は、ルート案の導線は、2011年の旧ワンスター参考記録で使われていた。
このまま発展すれば、今回のルート案が主流になっていたかもしれないが、そうはならなかった。
その理由は以下2つあるのではないかと私は思っている。
(1) 古くから現行ルートの順番が当たり前だったこと
(2) 下の足場まで降りずにエレベータ下の赤コインを取得できること
(1) 古くから現行ルートの順番が当たり前だったこと
2011年のはじめまでさかのぼってみたところ、この頃にはすでに現行ルートの形となっていた。
予想だが、この時期は、RTA用の参考動画として現行ルートの順番のものしかなかったのではないだろうか。
そのため、ワンスターの赤コインの順番を知る人が少ないまま発展していき、気づけば現行ルートの順番が主流になっていたのでは、と私は思った。
(2) 下の足場まで降りずにエレベータ下の赤コインを取得できること
これこそが、『現行ルートが一強』だと勘違いする理由だと思う。
70枚TASを見たことある方は知っていると思うが、エレベータ下の赤コインは下の足場まで降りなくても回収することができる。
このアプローチは、当時(2011年ぐらい?)の上位プレイヤーがたまに使っていた覚えがある。
引用元: N64 Super Mario 64 “70 Stars BLJless" in 42:58:52 – YouTube
当たり前の話だが、このアプローチをするには、エレベータを先に起動する必要がある。
そのせいもあって、「現行ルートの順番じゃないとダメ!」という印象がより強くなったのではないだろうか。
むすび
結局、今回のルート案は過去のワンスタールートのRTA版だったので、「もっと過去の動画も見たほうがいいなあ」などと、記事を書きながら思った。
このルート案は、2020年の現在は多くのプレイヤーが使っており、『主流ルート』と言っても過言ではない状況だ。
一応、ルート案に関しては今回の考察の話だけでなく、
- 赤コイン2枚目~4枚目付近のアプローチの考察
- 2回目にかごに来た時に、なぜエレベータが下にあるのか(初期位置にあるのか)
の2点も追加の考察として話したいと思っている。余裕ができた時に記事を書く予定である。