【マリオ64 RTA】BBH ちびテレサを誘導するテクニックが誕生するまでの考察を語る
2015年頃から120枚RTAなどで使われているテレサのホラーハウスの8まいコインはどこだ+100枚コイン(以下、100枚赤スター)。
このスターの終盤には、回転床の下にいるちびテレサを誘導するテクニックがある。
私が考えたテクニックなのだが、これを思いつくまでの考察が意外と面白いものだったので、今回はその考察がどんなものだったのかを語ることにする。
回転床の下にいるちびテレサとは?
順調に回転床までくると左側の細い足場の上にちびテレサがいる。これが『回転床の下にいるちびテレサ』である。
アイデアを作っていた当初、このテレサがネックとなっていた。その理由は、
- テレサを倒した後は右側の扉へ行きたいのに、左側にいるのでロスになる
- 細い足場付近で落下するリスクがある
というデメリットがあったからである。
当初は「このネックは解消できるものではないだろう」と考えていたが、知人からの教えでとある事象の存在を知り、その事象を考察することにしたのが事の始まりとなる。
テレサが赤コイン付近にいる現象があるらしい!?
知人から教えてもらったのは「ちびテレサが赤コイン付近にいることがあるらしい」ということだ。
もしこれが本当であり、安定してできるならばネックを解消できることになる。
「とりあえず条件を調べてみよう」と考えた私は、まず、ちびテレサが赤コイン付近にいる理由を考えることにした。
- 乱数が絡んでいる説
- マリオがテレサを誘導してる説
『1.乱数が絡んでいる説』は後回し
最初に考えたのは『ある特定の乱数値の時に赤コイン付近にいる』というような、乱数に依存している説だ。
もしこの説が正しかった場合、
- 乱数値を確認しながら調べないといけない
- RTAの通しを想定すると『ある場所である乱数値にする』というのは不可能に近い
ということになる。つまり、骨がかかる割に『乱数依存だからRTAでは難しい』みたいな結論になると思った。
「こんな結論が分かっても仕方ないだろう」と考えた私はこの説の検証を後回しにすることに決めた。
今になって考えてみると、数多くのプレイヤーが120枚RTAを走っていたのに対し、ごく一部のプレイヤーしか目にしない乱数パターンがあるとは到底考えられない。
この観点からも、この説が正しい可能性は薄かったんだと思う。
『2.マリオがテレサを誘導してる説』の考察
ルートとして採用するには動きのパターン化が必須だったので、この説の可能性に賭けることにした。
まず一般的なテレサの知識を確認する。
テレサには『マリオに見られていない時、(透明じゃない状態で)マリオのほうに近づく』という振る舞いがある。今回は、この振る舞いを『ホーミング』と呼ぶことにする。
ホーミングがどんなものか分からない方もいると思うので、ひとつ例を見せよう。
例えば、100枚赤スター中盤のアイクンとちびテレサがいる部屋では、マリオがアイクンの周りをまわっている時にテレサがマリオに近づいてくる。これがホーミングである。
『2.マリオがテレサを誘導してる説』は、「ホーミングを利用することでテレサを赤コイン付近へ誘導できるのでは?」という説だった。
しかし、この説を成立させるには1つ知識が不足していた。それは、『高さが大幅に異なる足場でもホーミングするのかどうか』という知識である。
「どうなんだろう」と思っていた私は、偶然にもあるひとつの現象を思い出したのだ。
上記は、ステージのスタート地点にてC上を押し、しばらく放置した後の画面である。
スタート地点とバルコニーの足場の高さは全く異なるが、バルコニーにいるテレサがマリオに反応して透明状態になっていることが分かるだろう。
この現象を思い出した私は、「バルコニーのテレサとちびテレサが同じ振る舞いだと仮定した時、高さ関係なくテレサはホーミングするだろう」と予想したわけだ。
予想を回転床の下にいるテレサに当てはめてみた
先ほど立てた予想を回転床の下にいるテレサに当てはめてみた。
紫色が回転床、赤丸2つが回転床の上と下にある赤コイン、黒丸がテレサとなっている。
上の足場と下の足場のオブジェクトが混在しているが、1枚の絵で説明したほうが都合が良いので、見にくくても我慢してほしい。
今までの100枚ルートでは、回転床の上に乗った後、体をひねりながら赤コインをかすめ取り下に降りていた。(青線がマリオの軌道)
この場合、ちびテレサは細い足場に残ったままになる。
続いて、先ほど立てた予想(高さ関係なくホーミングすること)をもとに考えた案は以下となる。(青線がマリオの軌道)
この案は、「マリオが回転床の上側の青いポイント(以下の画像)に立てば、テレサがホーミングして細い足場を歩くのでは」という考えがもとになっている。
机上でここまで考えた後、とりあえずこの方法でテレサを誘導できるのかを試すことにした。
本当にテレサを誘導できるのか?
青コインスイッチの部屋から戻ってきた後、奥の壁に向かってダイブ復帰を出す。
くるりと回って赤コインを回収し、回転床に乗る。
下に降りてみたところ……。
テレサが赤コインのところに来ていた!
この後、乱数を変えて複数回試行してみたが全て同じ結果となった。
私の予想が全て正しかったかは不明だが、このテストにより、この方法でテレサが誘導できることが分かったのである。
簡単にタイムを比較してみる
誘導できただけでは手放しで喜ぶことはできない。誘導しない場合よりタイムが遅いのなら意味が無いからだ。
実際に比較してみた結果はうろ覚えであるが、テレサを誘導するほうがコンマ数秒速いか、同じぐらいか、だった覚えがある。
どちらにせよ、遅くはならないという結果だったため、テレサを誘導すれば、
- テレサを倒した後は右側の扉へ行きたいのに、左側にいるのでロスになる
- 細い足場付近で落下するリスクがある
のうちの後者は解消できるわけだ。
「それなら誘導したほうが良いだろう」と考え、100枚赤スターのアイデア内で誘導テクニックを使うことにした。
以上がこのテクニックが誕生するまでの経緯である。
ちなみに、現在最速だと思われる軌道は以下となっている。(120枚idealrunの軌道)
むすび
今回は100枚赤スター内のひとつのテクニックの誕生経緯を語ったが、100枚赤スターの組合せが採用されるまでには、これ以外にも様々な考察があった。
- 回収するコインの考察や部屋順の考察
- 回転床の壁にぶつからないように下に降りる方法の考察 などなど
マリオ64オタクなら面白いと感じるような考察だったので、また今度、これら考察の話も書こうと思っている。