【マリオ64 RTA】TTC moving redsを考察してみた 前編
近年、仕掛けを速いスピードで動かしながら赤コインスターを取得するルート(通称moving reds)がRTAで実用化されつつある。
今回はこのルートの過去のアイデアを振り返った後、考察した結果を2記事に渡って書く。
moving redsを使うとどれぐらい速くなる?
現在のmoving redsは、グルグルかごのなかへなどで使われる右ルートを応用したものだ。
私の知る限りでは、2010年にhanoji氏が作成したルートだったと思う。
このルートでは、以下の順で赤コインを取得する。
遠回りした導線のように感じるが、仕掛けを利用することでそこそこ速いタイムを出すことができるのだ。
RTAにおいて、仕掛けを止めた状態でやる赤コイン(以下、stop reds)とどれぐらいの差なのかを算出したのが以下となる。
※ステージ入場で2.13秒の差があるので、それを加算している。
- moving reds: 15.10x + 0.00 = 15.10秒
- stop reds: 14.46x + (3.83 – 1.70) = 14.46x + 2.13 = 16.60秒
- 差: 16.60 – 15.10 = 1.50秒
上記より、1.5秒程度速くなることが分かる。
理想を言うならば、stop redsと同じ導線(以下の導線)を使って、最低限ステージイン分のタイム(2.13秒)は速くしたいところだと思う。
moving redsの理論値は?
今回の記事を読む上で、「moving redsはあとどれぐらい速くなるのか」を知っておいてほしいので、まずはそれを紹介する。
仕掛けを速いスピードで動かしながらやる赤コインの理論値は、120枚TASによると11.4秒(?)スタータッチ、12.2秒カメラ×となっている。
先で挙げたmoving redsのルートが15.10秒なので、それよりも3秒程度速いのが分かると思う。
仕掛けスピード"高速"の場合、ステージ内の仕掛けは固定周期で動くことになる。
moving redsでは仕掛けのどの周期に乗れるかでタイムが大幅に変わり、120枚TASの周期がおそらく『最速周期』となっている。
最速周期に間に合わせるための最重要ポイントは『赤コイン1, 2枚目の処理』にある。
上記は120枚TASの赤コイン1, 2枚目周りだ。
TAS並に速く進めたとすると、赤コイン2枚目に到着した段階で仕掛けの足場が縦の状態になっていることが分かると思う。
この状態から上に上がるアプローチは反転ジャンプぐらいしかないため、ここで反転ジャンプを出せないと最速周期に乗れないのだ。
しかし、ここ以外に難しいポイントは無いので、最速周期にさえ乗れてしまえば人間でも速いタイムが出せると予想できる。
アイデア振り返り その1
私は当初(2015年)、「最速周期を粘るだけでいいなら人間でもできるのでは」と思い、ワンスター用に以下のアイデアを挙げたことがある。
このアイデアでは最初、幅跳び2回+壁キック+ダイブ復帰という120枚TASと同じアプローチを使っている。
反転のシーンでは、以下のような感じで、少し手前(下側)に歩いて反転を出す猶予を作った。
最速周期に乗れた後のアプローチを人間ができそうなものに変更した結果、タイムは12.16秒スタータッチとなった。
考察時点でのワンスター記録はstop redsで13.36秒IGTなので、それよりも1.2秒ほど速いことが分かる。
このアイデアをアップした当時は『通せればUWR』ということもあり、何名かのチャレンジャーがいた。
しかし、『赤コイン2枚目を取りつつ反転を出す』というのが超難しいらしく、誰も通すことができずに終わってしまったのである。
アイデア振り返り その2
私が次にアイデアを出した時期は、moving redsがワンステージRTAで取り入れられた時期である。
内容としてはアイデアその1の改良版で、「これだったらできるんじゃないかな?」と思って挙げたものとなっている。
(1) 数フレーム歩いた後、QJK+二段ダイブ復帰を出す。
(2) 仕掛けの足場に乗り少し歩く。
(3) 一段ジャンプダイブ復帰で赤コイン2枚目へ。
以降の動きはアイデアその1と同じである。
最速周期に乗れているので、タイムはアイデアその1と同じぐらい(12秒台)になった。
このアイデアも結局、赤コイン1, 2枚目周りの難易度が高いために、人間がやるには難しいものだったようだ。
アイデア振り返り その3
現行のmoving redsの考察
2019年に入り、気まぐれで現行のmoving redsをタスったおかげで、あるひとつの学びがあった。
まずは現行のmoving redsの一部分を見てほしい。導線イラストで言うところの緑丸の部分である。
特に注目してほしいのは、ダイブ復帰をしている足場だ。
ダイブ復帰をしている時点で、足場がほぼ平行になっているのが分かるだろう。
現行ルートでは、この後、右斜め上になった足場を滑り台にして上に上がる。
私はこの部分を見て「あと少し速くここまで来れれば、(足場が平行状態だから)反転壁キックで上に上がれるのでは」と考えた。
そして、この考えをもとにひとつアイデアを作ってみたわけだ。
考察を元に考えたアイデア
(1) 三段壁キック後、ダイブ復帰。
(2) 少し歩いてから幅跳び。
(3) 奥の足場着地後、反転を出して下に降りる。
この段階でコンマ数秒速くなっていたので、下の足場にちょっとだけ速く到着できた。
このまま作り進めたところ……。
現行ルートでは間に合わなかった反転壁キックにギリギリ間に合わせることができたのである!
最終的に、このアイデアは13.36秒スタータッチ、14.36秒カメラ×となった。
現行ルートの最大は15.10秒カメラ×なので、それよりも0.73秒だけ速くなっていることが分かるだろう。
アイデアその3から学んだこと
アイデアその3から、最速周期に乗れなくても(当時の)ワンスター記録と同じぐらいのタイムを出せることが分かった。
以下が当時のワンスターの記録集で、1位の記録はIGT13.36秒(stop reds)であることが分かると思う。
つまり、アイデアその3と全く同じタイムなのである。
以上から、私はこう考えた。
(1) moving redsの現行ルートの周期より、0.5周期ぐらい速い周期に乗ることは人間でもできそうだ。
(2) 仮に(1)が実現できたとしたら、stop reds最速よりも速いタイムが出せるかもしれない。
(3) (2)が叶わなかったとしても、(1)が実現できるだけで現行ルートより速くなるはずなので、ワンステージRTAなどで使えそうだ。
むすび
今回はTTCのmoving redsにおける私のアイデアを振り返った。
次回はこの振り返りを元に新たなmoving redsを編み出した話をする。